がりつうしん

那須野ヶ原を中心とした話題と与太話、ほぼ余談。

幻の滝騒動

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昭和48年10月21日(日曜日)

読売新聞「ニュースの色」グラビア記事

紅葉のミラーボール
ここは那須・幻の滝
 那須御用邸のある栃木県那須郡那須町から北西の福島県境を見上げると、そこには紅に燃える那須連山がある。男性的な雄大さを見せる茶臼岳(別名那須岳1917m)を中心に南月山(1776m)、黒尾岳(1583m)朝日岳(1903)の峰々。
 夏の日の緑を一気に燃焼させるように、鮮やかな色の帯は山頂からふもとへと流れ、山に入ると、カエデ、ダケカンバ、ドウダンツツジは、すでに七ー八分の紅葉。若いハイカーたちが謳う若い歌声が樹間にこだまする。
 ”幻の滝”はこの那須連山にある。那須町三斗小屋温泉大黒屋旅館に伝わる下野三斗小屋温泉誌(明治四十四年刊)に「補陀落の滝」「見下(くだ)しの滝」と出ているが、国土地理院の地図にものっておらず、この夏、初めて発見されたばかりだ。
 それは、茶臼岳を北へとった所を一気に流れ落ちていた。二つはほぼ平行し、約二百メートル下がってもう一つ。上の右側の滝は女性的、左側のそれは男性的だ。
 三つの滝は、白い帯となって、紅葉をよぎって美しく散って行った。そして、その滝の音は互いに重なりあって樹木をふるわせ、まるで深み行く秋を惜しんでいるかのようだった。

経緯はこうだ。

ある山岳会の人が、地形図に載ってないので新発見であるとして公表したら、全国紙の新聞社ヘリで取材するような大騒ぎになってしまった。その記事の中でキャッチとして「幻の滝」という言葉が使われた。実際には明治の田代音吉著「三斗小屋誌」にも載っているし、別段新発見ではなかったのであるが。地形図に載っていなかったのは、この流域があまりにも危険であるため入山をおさえるためだ、と言われている(現在の地図には載っている)。記事中でも大黒屋所蔵の三斗小屋誌について触れているし、実際に大黒屋に取材に行っているかもしれない。そうならば、きっと以前から知られた滝だと教えるだろうし。まぼろしの「幻の滝」ってことで。