前から読みたいと思っていた竹内智恵子さんの「鬼追い 続昭和遊女考」を地元図書館から借りてきた。竹内智恵子さんは会津在住の民話探訪家。農山村の古老を訪ね、昔話や伝説、囲炉裏語りを聞き書きするうちに、一生日に当たらずに逝った女性たちの人生や歴史の昔語りを書き留める壮挙に取り組むことになる。
昭和遊女考シリーズは「北の都」、おそらく仙台常盤町小田原遊廓で、かつて働いていた女性たちの昔語りを聞き書きしたもの。大正から昭和初期、戦中戦後の地方の遊廓での生活を知る上で非常に貴重なものだ。昔遊女(と著者は彼女たちを呼ぶ)の語りは東北弁で、真に迫るものがある。昔遊女たちの悲惨な日常。親の借金を背負い、過酷な性的労働を強いられる毎日。そんな中でのお客や姉妓、遣り手、女将との心の交流は唯一の安らぎであり、人間として生きている証でもある。
「文字で読むと哀しいもんですネ、語る時は何とも思わんかったのに、何べんもメガネを外して涙ふいて読みましたよワ、気付いたら自分の語った昔でしたわネ」
(あとがき 昔遊女のことば)
ばあちゃん!思い出さなくてもよかった昔のことを語ってくれてありがとう。どうか長生きしてくれよ。もう亡くなってるかもしれないけど。
読後感はよろしくない。べつに知らなくてもいい昔の話し。
「昭和遊女考」(1989) 矢板図にあり
「鬼追い 続昭和遊女考」(1990) 西那須野図にあり
「鬼灯火(ほおずき)の実は赤いよ-遊女が語る廓むかし」(1991) 黒磯・大田原図にあり
「娑婆恋どり-廓女いま、むかし」(1992) 塩原・黒羽図書館にあり
以上未来社の4作。
「烏山旭遊郭」/大森茂宏