悪法生類憐令に翻弄される江戸の釣狂人たちの物語。当時のハゼやキス釣りの巧みな描写にワクワクし読み進めると、いつしか潮の香りが鼻腔をくすぐるあの感覚が懐かしくなってきた。今年は海遊び行くか。登場人物の中ではやはり朝湖と其角。二人の掛け合いが最高!その後の二人の運命はせつなく、個人的には一番の読みどころだった。忠臣蔵の話が出てくるが、松の廊下の件は浅野の言いがかりによる刃傷のような描き方をしている。史実では結局何が原因でキレたの?赤穂浪士による仇討ちは、人情物好きの江戸の庶民には義挙と解釈され芝居の演目にまでなったのだが、なんだか腑に落ちない。吉良の娘婿の采女に仇討ちし返せ(誰に?)と煽る無責任な庶民に、構うなよ、あっち行けよ!と怒りがわいた。正直最後まで采女の影は薄かった。
- 作者: 夢枕獏
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/07/28
- メディア: 単行本
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