がりつうしん

那須野ヶ原を中心とした話題と与太話、ほぼ余談。

宇都宮市内の銭湯

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宇都宮市内銭湯ガイド タウン誌うつのみや 1973初夏号より

たまに大きい湯船のお風呂に入りたくなる。家の内風呂では得られぬ爽快感、芸術的な壁画、カコーンと響くお風呂エコー、裸同士の解放感から気さくに話しかけてくるおっちゃんたち。最近ではスーパー銭湯とか日帰り湯が主流だが、今回は公衆浴場でも「銭湯」についての話だ。かつて人口密集地には必ず銭湯がいくつもあった。アパートにも内風呂がなく皆銭湯に通っていた時代、昭和40年頃には全国に銭湯が2万2000軒もあったという。


宇都宮市内にかつてあった銭湯

1970年(S45年)の商工名鑑より、39軒。末尾の年代は1970年商工名鑑掲載の創業年。


アルプス温泉 西大寛1-2-3
あづま湯㈲ 末広2-1-10 S40
朝日の湯 西原1-1-5 
㈲東湯 伝馬町2-19
東湯 大寛2-1-4 S21
銀杏の湯 旭町2-3435 S26
㈲泉の湯 今泉町1045 S34
稲荷湯 清住3-8-15
宇都宮温泉 大曽243 S42
歌の湯 一条4-5-37(旧歌ノ橋町)
江曾島浴場 八千代1-14-13 S30
栄美寿湯 南高砂町11-1 S41
亀の湯 旭町2-3458
越の湯 清住2-2-11
さざなみ湯 材木町3-8
桜の湯㈲ 戸祭1-2-15 S32
祥の湯 川向町739 S25
孝の湯 今泉町2600-5 S31
宝の湯 川向町817 S21
㈲武の湯 旭町1-3134 S27
㈲中央湯 伝馬町4-20 S23
つるの湯 簗瀬町285 S34
友の湯 富士見町1-15 S31
那須温泉 桜1-5-11 S30
那須温泉 今小路71 
南天ノ湯 吉野町2-3-9 S35 
人参湯 塙田町21
沼尻温泉 桜3-2-12
ひさご湯 江曽島町861 S30
姫の湯 宮本町19-12 S20 
不動の湯 西原町271 S41
福の湯 昭和2-4-22
藤の湯 東峰町3038 S39
平和(ピンフ)湯 旭町1-3508 S31
㈲宝泉湯 本町6-4
保の湯 桜1-6-12 S32
㈱宮の湯 上河原町532 S25
めいの湯 大寛2-9-5
サウナバス 千手町177 S42

ヘルスセンター
ヘルスセンターは現在のスーパー銭湯のはしりのような施設。大広間の休憩室、飲食スペースを備え、歌謡ショーや旅芝居を観劇出来る。

東光ヘルスセンター 平松本町363 S38
㈱大谷観音ヘルスセンター S33 大谷町1224
㈱かまぶろ温泉(ヘルスセンター) 野沢町547 S42

特殊浴場
リストに特殊浴場も含まれていたので掲載する。当初のトルコ風呂は健全なサウナなのだが、いつしかスペシャルサービスのある風俗営業のほうを差すようになっていく。

㈲雀宮トルコセンター 雀宮5-2-41 S40
トルコミス東京 松峰町1149 S34
トルコユニバース 旭町2-3419 S39

以下は1953年のリストにはあるが1970年のリストにない銭湯。1970年には役割を終え閉店してしまったお店だ。住所は1964年の住居表示実施以前のもの。

浅蜊(あさり)の湯 塙田町281
梅の湯 塙田町298
金の湯 大曾町243
鈴の湯 宮本町
宝の湯 泉町
宝の湯 宝木町
狸の湯 二条町1248
玉の湯 花園町1-17
西の湯 西大寛町2714
富久の湯 戸祭町
不動の湯 西原不動前278
富士の湯 宮本町
別府の湯 寿町2869
宮の湯 上河原町532
紅葉の湯 二条町1240



ちょうどこの頃の宮市内の公衆浴場の料金値上げについての記事があったので紹介する。

安いふろ屋に人気 六年間も据え置き 五円値上げ見送り組も
1970年(S45)4月5日 下野新聞

宇都宮市内の公衆浴場は、今月1日からおとなの入浴料金を30円から35円に値上げした。ところが市内のふろ屋さんの中には別に値上げをせず従来どおりおとな30円で営業しているところもあり、中には、27円という低額料金のふろ屋さんもある。わずか40軒足らずの市内の公衆浴場でおとなの入浴料金だけが35円、30円、27円の三本立てになったわけだ。「ふろ代は安いほどありがたいが、それにしてもこれはいったいどうなってんの」と首をかしげる市民も多い。
宇都宮市内のふろ屋さんは、現在39軒。この中でまずおとなの入浴料金が一番安い27円で営業しているのが市内西大寛町1丁目の「アルプス湯」。経営者の〇〇〇〇さん(70)は大正14年から同じ場所でふろ屋を行なっている古手の業者だ。〇〇さんの話によるとさる39年、浴場組合がふろ屋で売る牛乳1本につき1円組合に納入させた金の使途をめぐって組合幹部と対立し、組合を脱退した。以来独立独歩。組合脱退後行なわれた27円から30円への値上げのさいも他の業者に同調せず、今春の30円から35円への値上げも全く知らぬ顔。27円のままずっと据え置きだ。
「なあに食うだけなら、値上げをしないでもやって行けるさ」と強気の構えだ。
これほどではなくとも今回の値上げを見送り大人30円で営業しているふろ屋さんも多い。市内桜1丁目の「那須温泉」、今泉町の「泉の湯」、川向町の「宝の湯」旭町の「銀杏湯」などがそれだ。これら料金据え置きのふろ屋さんは、浴場組合に加入していない業者が多いが、それにしても何でも値上がりの昨今。例え5円でも安い方がありがたいという市民が多い。
市内旭町に住む会社員のAさん(20)は「私の行きつけのふろ屋は5円値上げして35円になった。まあ物価高のおり、5円程度の値上げは仕方ないと思っているが、営業時間が午後2時から夜11時までになり、従来より30分短縮された。昨年の秋ごろは夜12時まで営業していたのが、ことしの正月を境に11時半迄になり、今度また11時に早められた。料金は値上げになる、営業時間は短縮されるでは、何が客へのサービス向上かと文句も言いたくなるね」と憤まんをぶちまける。
一方料金が不ぞろいなことについて県環境衛生課「ふろ代は最高限度額を示したもので、県が示した額以下の料金で営業する場合は何ら法的に問題はない。ただ業者間で不都合にことがあるだろうが・・・」といっている。

入浴料金は公衆浴場法という法律で、各都道府県により条例で金額の上限が定められ、通常は浴場組合の取り決めで統一料金を設定する。そんななか老舗のおふろ屋さんが頑固に値上げに応じない。また今回の値上げに同調しないお店もちらほら。おふろ屋さんの生活のためにも値上げをして、安売り合戦でお客の取り合いにならないよう歩調を合わせたい浴場組合ではあるが。

現在宇都宮市内に現存する銭湯は、2018年3月に材木町のさざなみ湯さんがなくなって、若草の宝湯さんだけである。従来のスタイルの銭湯が進化して、サウナや飲食施設の充実したスーパー銭湯に役割や文化が引き継がれていると考えるなら、それはそれでいいのだけれど、やはり地域に根差した街の銭湯の存在が消えようとしているのはさみしい。あなたのご近所にも銭湯があったという記憶を心にとどめて、そしていつか誰かに伝えてほしい。