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がりつうしん

那須野ヶ原を中心とした話題と与太話、ほぼ余談。

大正十一年の防火週間

花街・色街 集落と街並

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大田原にあった「時の鐘」の塔がデザインされたポスター

大正11年、栃木県各管内の消防署が「防火週間」を通じて一般市民に防火意識をPRする活動を行った。「吾が防火週間」はその活動報告書で、趣向を凝らした当時のPR活動の様子を知ることが出来る。今回はこの報告書の中でみつけた、大田原花街の芸妓さん達が行ったユニークな防火PRの様子を紹介したい。


芸妓営業組合の宣伝

大田原芸妓組合に於ては、宣伝流行歌を考案し印刷配布したる外客席に於て之を唄い、また左記印刷物を作り三味線及び胸部に付着し宣伝したり。

お座敷でお客さんに防火意識を高める内容の小唄を唄ったというのだ。ドドイツや俗謡の替え歌で盛り上がる愉快なPR作戦。


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配布した唄本の表紙

◎二月十五日より一週間お座敷に於て必ず此の唄をうたう事

 □ 防火宣伝都々逸 (梅川家糸丸 作)
○お互いに火の元気をつけ火事さえなけりゃ つまり身のため人の為
○町を灰にする大きな火事も 元はたばこの殻一つ
○蛍見たやうな火の子でさへも 注意せにや大田原が灰になる

 □ 同 (桝春 作)
○心のもち様で風吹く時も 火の番せず共安気する
○油断すりや 煙草の火でさへ大事となって 家も宝も灰となる

 □ 同 (松芳家〆松 作)
地震雷盗人よりも 吹いた煙草の火がこはい
○深の夜中の火の見で見はる 主のおかげで高いびき
○火元は七代さかへぬ例へ 皆さん火の気に御用心
○寝るに先だちかまどに注意 心づかいも主のため

 □ 同 (松芳家〆松 作)
○汗でつくりし家蔵さへも 油断大敵灰となる
○たまの逢ふ夜に聞こえる半鐘 主は火消よ留めはせぬ
○千年の歴史に残りし社に寺も 一夜で消ろも火事のため

 □ 同 (桝都竹松 作)
○消へた灰ぢやとてゆだんをするな 風にもつれて火にかいる

 □ 同 (丸家小そで 作)
那須の名物桜に風よ 油断しやんすな火の元を
○週間宣伝防火のことよ 皆さん頼むよ火の元を
○先祖伝来ためたる宝 消へてなくなる赤い風

 □同 (村上 作)
○火事のげんいん調べて見れば 大くは注意のたらぬより

 □ 同 (かねにし 作)
○雨は天から涙は目から 火事は互ひの油断から
○怖い親父が怖がる位 およそ世間に怖い火事
○蛍みた様な煙草の火でも 心許せば半鐘(かね)の音
○飲んで帰つたお客の座敷 火鉢座布団よく始末
○けしたつもりの火消のつぼも 置場悪けりや火事となる
○よそ出する時炬燵に火鉢 火の気あるとこ気をつけよ

 □ 同 (吉中村浪子 作)
○火の元注意が足りない罰で 一夜乞食の此の姿
○雨の降る日も雪ゆる夜半も ゆだんしやんすな火の元を
○雨は天から病は気から 火事は互ひの油断から

 □ 同 (吉中村浪子 作)
○痴話が高じて炬燵を倒し 火の元注意で仲直り
○親には孝行君には忠義 火の元注意を忘れずに
○たしなましやんせ空吹く煙草 つのりや大事な火事となる

 □ 同 (吉福萩喜久次 作)
○雨の夜も月夜おぼろ夜雪ふる夜も わすれてならぬが火の元よ
○寝るも起るも留守ならなをよ きをつけさんせよ火の元を

 □ 同 (印南 作)
○蛍見たよな残り火からも 油断さへすりや火の海よ
○気をつけしやんせ世間の人よ 火事はたがひの油断から
○火事よ火事火事その火事さへも 火元慎みやなくてすむ

 □ 同 (政都もとめ 作)
○なげたシガーのあの吸殻が もしやと気になる二ツ鐘
○風になびかぬあのいなつまも ゆるむ手綱に濡れて出る

 □ 同 (澤増ヽ六 作)
○百萬長者がけむりになるも たつた一夜のゆだんから
○左褄とる元はといへば やいて殺した蚊のうらみ

 □ 同 (火防学士 戯作)
○お前かまどを私は洋燈 子供にや燐寸を渡さずに

 □ 同詩入都々逸
○小さな火ぢやとて気をつけしやんせ
火焔濛々忽盡甜(くわえんもうもうとしてたちまちなめつくす) 生命財産大被害
大事は小事から皆起る
○粗末にしやんすな吸殻ぢやとて これが大火の元になる
○口に言へども遂ひ油断がち 口にも言ひつヽ心がアら
                   (以上都々逸)

  
 □ 鴨緑江節 (村上 作)
子の親ヨー、子供のマツチは禁物ヨー、所々の大火も、大くはマツチヨー、よいしょう、親の注意はヨー、大切ヨネー、マツチ又大火の玉子なり、チヨイ〃


鴨緑江(おうりょくこう)というのは中国と朝鮮半島の間に流れる河川の名前。恵山鎮近辺の酒席の唄を出稼ぎの日本人筏(いかだ)師たちが伝えて流行した歌。ポーツマス条約で旅順・大連の租借権を手に入れ南満州に進出した頃の話。

 □ 同 (吉中村浪子 作)
ほたる火の様な、小さい火の子でさへも「ヨイショー」油断しやんすな、アリヤ火事となる「ヨイショ」火防宣伝ヨウ、見やしやんせヨー、マツチも又大火の元となる「チョイ〃」
 
 □ 同 (三桝家三吉 作)
火の元の煙りたつのに、心をつけりや、火の出るうれいが有るものか、小さな、ものでも、コリヤ油断するなよ、マツチの火でさへ、火事の親「チヨイ〃」

 □ 同 (同人 作)
大道を煙草すうのを、きをつけよ、風が、さそへば、火事となる、それを見廻るよ、コリヤ、消防のヨ注意、又、とゞいて、ぶぢな町

 □ サノサ節 (梅丸 作)
見やしやんせ、蛍見たよな、火の子でさいも、風がさそへば火事となる、若しも焼ければネー、衣食住、互ひに苦労をせにやならぬ



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芸妓さんが身に着けたバッチ(かわいい)
 

徳利、盃利用の宣伝

大田原町深川遊廓貸座敷組合にては客席に用ふる徳利及盃に「火の用心」の文字を表し宣伝せり
 

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西那須野にもお座敷があったみたいだな。

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烏山遊廓見番の防火週間ポスター


乾燥する季節、くれぐれも火事にはお気を付け下さい。

参考: 吾が防火週間(大正11)栃木県警察部, 栃木県消防義会 編
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